あの日、四国のファミリーレストランで彼と別れてから数年が経ちました。
私は、彼とはもう会うことはないかもしれない。
そんなことを思っていました。
なぜなら、彼はあの時、
「転職は考えていません。」
とはっきり話していたからです。
ところが、ある日一本の電話が鳴りました。
「上原さん、お久しぶりです。」
聞き覚えのある声でした。
四国でお会いした、あの現場監督の彼です。
「実は、転職の相談があります。」
私は少し驚きました。
話を聞くと、お父さんの紹介で入社した工務店で数年間、一生懸命頑張ってきたそうです。
しかし、会社の状況は少しずつ変わっていきました。
そして彼自身も、将来を真剣に考えた末に、一つの決断をしていました。
「もう一度、自分の可能性に挑戦してみたい。」
私は、あの日ファミリーレストランで話した内容を思い出していました。
だからこそ、今回は本気で転職先を探しました。
もちろん、一番気になっていたのは、お父さんのことです。
紹介してくれた恩。
下請けとして仕事をしている関係。
そこだけは、絶対に失礼があってはいけません。
彼も、社長やお父さんに誠意を持って話をし、最後まで筋を通しました。
その話を聞いた時、私は胸が熱くなりました。
転職は、会社を辞めることではありません。
今までお世話になった方々への感謝を伝え、新しい人生へ進むことでもあります。
そして、彼は新しい会社へ。
あれから10年以上。
今では施工管理のマネージャーとして活躍し、ご家族にも恵まれ、二人のお子さんのお父さんになりました。
以前、久しぶりに電話で話した時、とても幸せそうな声で近況を聞かせてくれました。
あの日、四国のファミリーレストランで出会った時は、転職を考えていなかった彼。
でも、人生には「その時」があります。
私は、人材紹介とは無理に転職を勧める仕事ではないと思っています。
その人が「今だ」と思えた時に、全力で背中を押す仕事です。
だから私は今日も、目の前の一人と、真剣に向き合っていきたいと思います。
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