2015年頃、今から10年以上前の話です。
人口5万人ほどの地方都市で、施工管理を探してほしいというご依頼をいただきました。
20年以上、人材紹介を続けてきましたが、あの案件は間違いなく、私にとって一番苦しく、胃が痛くなるような1年間でした。
その町は東北地方の小さな町。
主要都市からの通勤は現実的ではなく、いわゆる「陸の孤島」と呼ばれるような場所でした。
正直に言えば、「今回は難しいかもしれない」と何度も思いました。
ですが、私は諦めることができませんでした。
なぜなら、私の仕事の目的は、売上をつくることではないからです。
「お客様の笑顔を見ること。」
それが、私がこの仕事を続ける理由です。
だから、1か月や2か月で見つからないからといって諦めることはありません。
私にとって、それは珍しいことではないのです。
ようやく出会えたのは、50代の施工管理で、1級建築士の資格を持つ方でした。
そこから、すぐに転職という話にはなりませんでした。
何度もお会いし、何度も話をしました。
時には夕食をご一緒し、お互いの人生や仕事について語り合いました。
その方にとっても、大きな決断でした。
新しい会社では、今まで以上に期待されるポジションが用意されていたからです。
そして約1年。
ようやく、その方は新天地への一歩を踏み出しました。
それから10年。
久しぶりにその方へ連絡をしてみました。
すると、こんな言葉が返ってきました。
「今は施工管理部の役員マネージャーとして、60代を迎えています。」
そして、続けてこう話してくださいました。
「もし、あの時、上原さんに会っていなかったら…。自分の判断だけで転職を見送り、そのまま今の会社に残っていたと思うと、本当に怖いです。」
その一言を聞いた瞬間、この1年間の苦労がすべて報われた気がしました。
人材紹介は、求人を紹介する仕事ではありません。
誰かの人生の転機に寄り添い、その人が数年後、10年後に「あの時、決断してよかった」と思える未来をつくる仕事だと、私は思っています。
だから私は、今日も全国各地へ足を運びます。
私の役目は、お客様の笑顔を見ること。
その笑顔を見るためなら、1年かかる案件があっても構いません。
それが、私が20年以上、この仕事を続けてこられた理由です。
