「実は会社を退職したんです。どこか紹介してもらえませんか?」
少し驚きました。
相手は40代。
住宅会社の立ち上げから携わり、自分で会社を大きくしてきた社長です。
経営も順調に見えていましたし、外から見れば「このまま会社を引っ張っていく人」だと、多くの人が思っていたはずです。
ですが、現実は違いました。
詳しい事情は書けませんが、あることが理由で退任することになったのです。
もちろん本人にも様々な思いがありました。
会社を創り上げてきた人だからこそ、その決断は簡単ではなかったでしょう。
実は、このような相談は珍しいようで珍しくありません。
私は住宅・建築業界専門のヘッドハンターとして20年間仕事をしていますが、年に1回くらいは同じような相談があります。
社長。
役員。
創業メンバー。
会社をゼロから育ててきた人。
そんな方でも、突然会社を離れることがあります。
会社というのは、人が集まる組織です。
経営方針の違い。
株主との関係。
後継者問題。
オーナーとの考え方の違い。
どれだけ実績があっても、自分の力だけではどうにもならないことがあります。
だから私はいつも思います。
「社長だから安泰」ということは決してありません。
その方とは何度も電話をしました。
「今後どういう仕事がしたいのか。」
「何を大切にしたいのか。」
「もう一度社長を目指すのか。」
「それとも経営を支える立場で力を発揮したいのか。」
肩書きではなく、その人自身を見ながら話を進めました。
私が紹介するのは求人ではありません。
その人の人生です。
だから時間をかけます。
結果として、その方はある住宅会社へ転職することになりました。
役職は執行役員。
社長ではありません。
しかし、その会社では今まで培ってきた経験を存分に発揮できる環境がありました。
社員教育。
組織づくり。
営業戦略。
採用。
会社全体を見渡せるポジションです。
「この会社なら、自分の経験を活かせる。」
そう思える会社と出会えたことが、一番良かったのだと思います。
ヘッドハンターという仕事をしていると、よく言われます。
「良い会社を紹介しているんですね。」
でも少し違います。
私が探しているのは、良い会社ではありません。
その人が、もう一度輝ける場所です。
同じ会社でも、活躍できる人もいれば、力を発揮できない人もいます。
逆に、今まで評価されなかった人が、環境を変えただけで驚くほど結果を出すこともあります。
私はそんな場面を、この20年間で何度も見てきました。
人生には思いもよらない転機があります。
会社を辞めることになった時は、不安でいっぱいになるかもしれません。
ですが、それが人生の終わりではありません。
むしろ、新しいスタートになることもあります。
今回の社長もそうでした。
あの時、勇気を出して一本の電話をくださったからこそ、新しい未来につながりました。
私はこれからも、一人ひとりの人生に向き合いながら、その人が本当に輝ける場所を探し続けたいと思います。
肩書きではなく、人を見る。
それが20年間、私が変わらず大切にしている仕事の姿勢です。
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